今月の映画観賞まとめです。
ネタバレ注意!
【タイトルリスト】
△ノー・エスケープ 自由への国境(U)
(両者とも犯罪者なら弱者の肩を持ちたくなる。のだが、不法に国境越えてくるメキシコ人を不法に殺してたオッサンの「置いてかないでくれ!」という叫びに、『あぁ、この人は既に置いてかれてた人なんだな』という気持ちにもなってしまってなんとも言えない気分に。そもそも頭の方にあった警察官とのすれ違いシーンでもそれは示唆されていたのに、その時はそこまで思いを巡らせることが出来なかった(「ん?」とは思ったが、それ以上にもっとヤバい人と思った)。主人公もスーパーヒーローではない普通の人なのでヘロヘロになりながらも辛うじて勝って「砂漠に殺されろ。」と問題のオッサンをあっさり置き去りにしていく。唯一、不法移民同士の仲間意識はあるようだが、対立相手との対話は一切ない。気配もない。それが現実なのか。ラストについても主人公にハッピーエンドが待っているとは到底思えない。せめて背中に背負ったアデルが死体になっていないことを願うだけなんだけど……。ラストシーンの何もない風景がこの映画の全てなのかもしれない。)
・疑惑の影(U)
(もとよりそういう作風の監督なのでミステリー的な内容とかそういう部分は「正直いまいちかな」って感じなんですけど、それ以外は流石ですよね、ヒッチコックの演出。お父さんの所在無さとか妹弟や友人たちの言動/表情とか、チャーリー叔父さんの描写とか、あと影とかカメラワークとかビジュアル的な演出だけでなく、観客も終盤入るまで『チャーリー叔父さんが何をしたのか』本当のところは分からないという演出も巧い。そして、今回の探偵役・グラハム刑事が若干(いや、だいぶ)ポンコツで役立たないとこも、そんな刑事とチャーリー(姪)のメロドラマもいつも通り。まぁ今回は、小出しにされる状況証拠で徐々に疑惑を深めていく、というストーリーなので少なくとも探偵役やミステリーの部分がイマイチなのは仕方ないのかもしれんが。ところでヒッチコック監督はどこに?全然わかりませんでした。)
・サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー(T)
(世知辛い世の中だけど、なちょっとほのぼのムードの前半から後半に突入した途端、急にアクセル全開で不穏な方向にハンドル切ってくるんですが、どこからどこまでが妄想なのか分かりづらいのもあって、タイトルの『サムシング』がどこの地点だったのか、よく分からぬまま終わってしまった感はある。けど、それだけ主人公の悲喜劇を感情的に描いていない(客観的に描いた)と言えるのかもしれない。個人的に終幕に至る殺人は妄想(途中のアレはともかく)と捉えたのだが、その上で主人公がそれでもこちら側に踏み止まって再びタクシーに乗り込んだのなら良いなぁ、とは思う。ラスト、髪を下ろしてタクシーに乗り込む女性と画面の奥にチラリと見えた(と思った)緑のドレスの女性、主人公が選んだのはどちらか、というより、どちらも『現実』なのかもしれない。女性版『タクシードライバー』ではない。そして、ヒッチコックはともかく、シャンタル・アケルマンでもないのではないか。原題『Que nadie duerma(誰も寝てはならぬ)』……『トゥーランドット』に詳しくないとダメだったかもしれない。勉強不足でごめんなさい。)
△かわいくなりたくて/ Felt Cute(-)
(短編。こういう映画は製作国(監督の出身)のお国柄が出るんだな、と強く実感。隠すのではなく、弟自身が自らの意思でもって自分で部屋のドアを開けることが出来る、そしてそんな弟に対して家族がいつも通りに接するあたり、『女性の休日』を実行した国は伊達じゃあないんだな、と思う。)
・幻影 / Ghostly(-)
(短編。別離の理由は描かれないのでなんとも言えぬが、オシャレな恋愛ドラマの範疇に収まるのはイタリア映画だからか。捉え方は人それぞれと思うけど、個人的には別離の理由次第じゃない?と思う。)
△フランケンシュタイン(N)
(お金掛かってるなぁ、という感想はまず置いといて。ギレルモ・デル・トロらしい色彩感覚とストーリー。特に色彩については本気で考察始めたらたぶん楽勝で小論文1本分になると思う。ストーリーについては、割と原作に沿った内容、と思ったけど、頭から終わりまで『創造主と被造物』ではなく、しっかり『父と子(/怪物)』の物語であった。そこにデル・トロらしい『弱者(子/怪物)の視点』が交じる。ラストああいう風に『父と子』として分かり合うのなら名前付けてあげればいいのに、と思わなくもないが、それはもう『フランケンシュタイン』じゃないような気がするし、彼が『名もなき怪物』であることに意味があるのだから、それでいいのだろう。)
・ゴーストバスターズ/フローズン・サマー(N)
(こういう映画は何よりノリが大事と思うので、中弛みはちょっと否めないけど全体のノリ自体は悪くなかったと思う。ただ個人的には、女性に置き換わったリブート版『ゴーストバスターズ』が好きなので、それには及ばないかなぁ……。1980年代のノリを2020年代の今にそのまま持ってくることなんか出来ないのは承知の上ではあるが。そういう意味で、リブート版の方がアップデートうまかったと思うんだよね。あと、今回はシガニー・ウィーバーさんのカメオ出演無いのか。色々事情はあるんだろうが、ちと寂しい。)
△デビルズ・バス(U)
(昨日からの温度差がエグい。劇場公開を見逃しちゃったヤツだが、結論『劇場で観ても良かったな』。予告編やチラシのイメージ程ショッキングな内容では無かったが、といって気軽に観るような代物でもない。グロテスクなホラーじゃなくて『ガール・ウィズ・ニードル』と同じラインの『女性の生きづらさの物語』だった(ほぼ同じタイミングで劇場公開してた気がする)。しかも陰惨さと唯一の『救い』の救いのなさが圧倒的にキツイ。『ガール・ウィズ・ニードル』のガール(カロリーナ)にはそれでも寄り添ってくれそうな夫やそれでも裁判で男たちに嫌味を言いつつすべての罪を一人で背負った女がいたが、こちらのガール(アグネス)には寄り添ってくれる相手がいない。外側から押し潰されていく中、神に赦される瞬間を自ら取りに行くだけ。そこら辺は時代設定の違いもあろうが。そう考えると、アグネスの夫もよその村から嫁を取らなければならない誰にも言えない事情があったのかもしれない。お世辞にも裕福とは言えない山中の寒村、しかも母親が『雇い主』という力関係の中で生きていく以上、全面的にアグネスをフォローすることは出来なかったのかもしれない。それにしたってその言動は、と思うシーンもあるが、その一方で、アグネスへの言葉のかけ方とか自殺した男の顔や断頭台のアグネスを見た時の表情を観る限り「きっと優しい人なんだな」と思ってしまえるのが……また辛い。)
△クレイリーレイクの終わらない夏/ Crarylake Boats and Floats(-)
(短編。こういう何か起こりそうで起こらない、いやもしかしたら何か起こっていたのかも?な退屈な夏の終わりの1日って良いよね、と思えるティーン映画。持て余してる主人公レーンはもちろん、やっぱり持て余してる大人たちの表情もいい。)
△サスペリア(P)
(1977オリジナル版。スプラッタというかグロはグロだが、妙にポップな風合い。照明の色やセットの内装の色、柄、装飾……画面に映るものすべてにおいてここまでリアリティがないのもスゴいと思う。さすがイタリア、美的センスは尖っている。あとオルゴールみたいなテーマ曲も(ちょっと『エクソシスト』っぽいが)不穏感漂って良い。そして内容については意味分からん。伏線ぽい伏線?をことごとく回収せずにラストは主人公の絶妙なスマイルで終わる。分からん。そもそも何故主人公を呼び寄せたのか?という話の導入からもうよく分からん。魔女に乗っ取られた、とかそういう話なの?真面目に観て真面目に考察すれば、照明の色、壁紙の意味とか諸々分かる→内容も理解できる、となるのかどうかも分からん。デヴィッド・リンチの方がよほど親切なのかもしれない、と心の底から思った。もしかしたら、ルカ・グァダニーノによるリメイク版の方を観た方がよかったのかもしれない。)
✕ヘル・ディセント(U)
(B級を観ようと思って観たわけだが、『B級アクション映画』というより、『B級のやっすいアクション映画』であった。主人公女優の風貌も相俟って、画面のそこかしこにミニサイズの『ポール・W・S・アンダーソン』が見え隠れする。なんかもう色々と雑で安いのだが、アフガンという舞台とかそういうのは悪くないとは思う。けどクリーチャーデザインはもうちょいこだわろうぜ、と言いたい。ポール・W・S・アンダーソンなら低予算でももっとこだわったはず。)
☆バンドワゴン デジタルリマスター版(U)
(今は無きシネマスクエアとうきゅうで観たあの頃からだいぶ時間は経ってしまったけど、やっぱ最高に大好きな映画であることに変わりはない。思えば高校生の頃からインディーロック好きとロードムービー好きとアメリカ西部のロードサイド好きは変わってないんだな、と実感。おんぼろワゴン、ダイナーのパンケーキ、狭いライブハウスの埃っぽくて雑多な雰囲気にすぐそこでギュインと鳴り響くエレキギターの高音、黄色く色付く木々、落ち葉の降り積もる小川のほとり……私の中では青春映画No.1だよ。みんなちょっとずつカッコよくて、ちょっとずつダサい。彼女か、バンドか。メジャーか、インディーか。セットリストはどちらの領分か?結局、どちらの未来を選択するのか。彼らの回答は青臭いけど最高でもある。U-NEXTありがとう。)
・ゴッドランド/GODLAND(U)
(劇場公開時に気になったけど見送った映画。結論『微妙。たぶん劇場で爆睡したとは思う。』監督はアイスランドの過酷とも言える大自然を撮りたかっただけなんじゃないか?と思わなくもないが、それはともかく問題は信仰やら差別意識やらにあるんじゃなくて、主人公の牧師個人の性質にあるんじゃないんか?というか。そして牧師とじいさんは互いに合せ鏡のような存在なんじゃないか、と。けどまぁ、牧師の狂気やアイスランド開拓者たちの村の閉鎖的な雰囲気がもっとエグい感じで展開していく内容かと思っていたのでちょっと拍子抜けはした。もしかしたらアイスランドの過酷な自然美でなんとなくマイルドになってるだけかもしれんが、そういう意味では『デビルズ・バス』の逃げ場のない森の方がキツイ。ラストで牧師のなれの果てに語るのが姉ではなく妹だったのは、生々しい人間ドラマではなく寓話的に終わりたかったからなのかな、とか考えながら終わる。ところで、この映画を作るきっかけになった、という写真、エンドロールとかどこかで使うわけにはいかなかったのかね、ちょい残念。)
・インランド・エンパイア(U)
(デヴィッド・リンチの狂気に付き合う3時間。こんなん一発で理解できてたまるか、という話なんですが、まぁ本当に分からん。全体を通してのシナリオはなく、撮影の度にそのシーン用のシナリオ用意して、っていう感じで撮ったらしいので、そんなん監督本人だって明快で簡潔な説明なんか出来ないんじゃないのか。撮影手法も3時間という長さも完全に『フィルム→デジタルへの移行』の弊害でしょうよ、これ。とはいえ、そんな手法で『一本の映画』を作るんだから、単純に「凄ぇな」とも思うけども。で、内容については、ローラ・ダーン演じる主人公が『ニッキー』なのか『スーザン』なのか、もしくはそのどちらでもあり、どちらでもないのか、とかよく分からない。そもそも、劇中劇の劇中劇?、みたいな構造が複雑。なのだが、監督はハリウッドの性搾取について、よほど心を痛めていたんだろう、と感じるくらいには今回も性産業へ従事せざるを得ない女性たちの物語だとは読み解けるし(合ってるかは知らん)、特に今回は明確に彼女たちを『救おうとした』のかな、とも思いました。)
△コズミック・ボウリング / Cosmic Bowling(-)
(短編。『クレイリーレイクの終わらない夏』と同じテイストに同じ女優、と思ったら、やはり同じ監督であった。こういうイケてるようでちょっとイケてないハイティーンの日常は心の滋養に良い。)
・ネオン・ファントム / Neon Phantom(-)
(短編。ミュージカル仕立てで描く労働者の悲哀。労働の内容は現代的だが、労働者の悲哀そのものはたぶんずっと変わらない。『ぢつと手を見る』。タイトル『ファントム(Fantasma)』がホントにそういう意味だったことに軽く衝撃を受け。そして、ポルトガル語の響きが、物語により一層の悲哀感を添えている気がする。)
△バルタザール・コベルの驚くべき旅(T)
(体調不良(頭痛)の通院にかこつけて仕事休んでやっと観れたポーランド映画祭の一本。愚者ゆえの聖人?(若者)があの世やらこの世やらを旅する物語で、ポイントはこれが『立身出世』の話でも『新しい時代』の到来を高らかに宣言するような話でもなく(『新しい時代』についてはたぶん物語のベースになってたとは思うが)、純粋に『旅すること』そのものを目的としているところ、と理解したが正解かどうかは知らない。神学とかポーランドあたりの土着の死生観や文化に詳しければもっと見える部分があるのかもしれないけど、おそらくそれ(出した結論の内容ではなく、自分の出した結論が正解かどうか分からない状態)を楽しむので良いんだと思う。よく分からない2時間なのに退屈はしないし、画面に引き込まれる。テーマ音楽がとても良かった。本当に良かった。全体的にクラシックな舞台装置好きにはたまらん映画でもある。心の底から観れて良かったと思うが、『砂時計』他、もっと観たかった、ポーランド映画祭・・・)
△プリーズ・ドント・デストロイ: 霧の山のお宝を探せ!(N)
(タイトル、そして主演3人をはじめとするキャストのビジュアルからしてもうB級コメディの香りしか漂わないんだが、案の定というか当然のようにB級コメディ。けど、その笑いが胸焼けしない程度の感覚で非常に良かった。この手のやつでたまによくある『いやもうしつこいししんどい・・・』とはならないし、尺的にも笑いの質的にも程よくて気軽に観れるし、下品すぎないのでなんとなく好感が持てる。主演3人だけでなく、周囲の人たち全員引っくるめて程よいダメさ加減がいい。どこか憎めない感じ。ジョン・グッドマンの渋い声によるナレーションとその内容もとても王道な感じがしてよかった。)
・ブラックニング(N)
(ホラー『コメディ』の扱いだが、黒人差別なジョークを黒人がやる、ってどこまで無邪気に笑いながら観ていいのか。ジョークの内容やノリはやっぱ当事者にしか分からんし、当事者だからこそ笑い飛ばしていい、みたいな空気を感じる部分もあるし、そもそもある程度の前提知識や理解がないと、線引きができないのでジョークとして咀嚼できない。実際、あの場に黒人でない人がいて一緒に笑ってたら変な空気になるんじゃないの?と、まぁそういう難しい話は抜きとして。ホラーとしてもサスペンス?としても、なんか全体的にもうちょい、というか。真犯人が誰か、早々に検討ついちゃうのはともかくとして動機が弱いと思う。もしかしたらその動機も『黒人』的なもの由来なのかもしれんが。やっぱ難しいよ、これは。)
・ピエロがお前を嘲笑う(U)
(なんというか、『結末のどんでん返し』がすべてで別に面白い映画じゃないので、これはさすがにネタバレしたら問題ありそうで感想言いづらい。まぁネタバレしちゃったらしちゃったで、『粗探し』という楽しみはあるが、『結末のどんでん返し』しか考えられていないので作り込みの『粗』自体は大きいし、『信頼できない語り手』はまぁいいとして、それも度が過ぎるとな、という感もある。とりあえず、マリの存在が微妙すぎるし、MRXも最後の最後でマヌケ過ぎんか?とはいえ、100分ちょいの映画だし飽きずに観れる映画ではあった。)
・エスケイプ・フロム・トゥモロー(U)
(無許可で撮影したらしい。とかそういう話題は脇に置いておく。ダークファンタジーとかホラーファンタジーとか、たぶんそういうジャンル。主観と客観、妄想と現実の境が分かりづらいが、基本的に父親の妄想、と見て問題はないと思われる。何かと口煩い妻となんとなく距離のある息子、おまけに仕事は電話一本で解雇されて、優しいのは娘だけ、とまぁそんな状況で夢の国を楽しむのもしんどい、という話。母と息子がべったりで逆に娘は父に懐いてる、とか、家族の形としてもけっこうリアリティはある気がする。『自殺』か『猫インフルによる死』かについては解釈が別れるだろうが、『自殺』の方がタイトル的にもしっくりくる。終始、父親の被害妄想的な妄想で綴られるのだが、個人的にはラストのシークエンスに最大の皮肉を感じた。とりあえずD好きには絶対にオススメしない一本。)
・X(U)
△Pearl(P)
・MaXXXine(P)
(3部作一気観。ホラーとしては3部作通じてスラッシャーでゴアな内容なので観る人は選ぶ作品。内容は基本的には『性産業』と『女性の自立』がテーマなんだと思うが、この作品では『女性が「スターになりたい」と自発的に性産業に就いている』ので、デヴィッド・リンチ作品に出てくる女優たちとはちょっと毛色が異なる。2作目の『Pearl』がたぶん肝心要な中心で、2作目を咀嚼してないと3作目の『MaXXXine』におけるマキシーンのラストが生きないし、1作目『X』が『ただの老夫婦の狂気』もしかしたら『ホラーコメディ』で終わりかねないので……3作全部ちゃんと観ないと理解できずに終わってしまうこと必至。パールとマキシーンは合せ鏡、と思うと途端にパールが本当に哀れな女性に見えてくる(ただし、衝動的に殺人を犯しかねないちょっとヤバい人、という設定はしっかり描写されてるが)。そして、『X』と『MaXXXine』に関しては『Pearl』が無いと微妙だが、『Pearl』については『Pearl』単体で成立すると思う。個人的には、『Pearl』のラストの泣き笑いのひきつった表情が恐ろしい。一番怖いシーンかもしれない。3作それぞれ、時代設定に則した映像表現になってて地味に凝っている。それにしても、ミア・ゴス、年齢不詳の怪しさ満載。顔の造形とか独特の雰囲気がホラーに合うというか。)
・ハッピーバースゲイ/ Happy Birthgay(-)
(短編。母親の過剰なテンションに付いていけない息子。息子が抱える秘密の話と思いきや、母親が抱える秘密の話だった。おばあちゃんの冷静な聡明さがカッコいい。)
△シンプル・プラン(U)
(雪、田舎、大金、ノワール、とくればどうしても『ファーゴ』を連想してしまうが、『ファーゴ』からコーエン兄弟特有のエキセントリックさを引いた風合いの田舎ノワール映画。兄とその親友がダメに見せかけて、誰より節穴だったのは『自分を3人のうちで一番賢くまともと思っている弟』と『ふつうに金に目が眩んだその妻』だよな、というオチ。『春先までセスナの事も金の事も秘密にしておく』だけなのにな。帰宅後、すぐ妻に話しちゃってるし。そんなこともあって、どう見ても妻の入れ知恵で動く弟が事態をさらに悪化させているのだが、そんな弟が兄とその親友を見下していることが言動の端々、それも冒頭から分かりやすく提示されていて。そして、それに反比例するように上がっていく兄の人間味。中盤の親友を嵌めるシーンなんか、兄の方が出来るんじゃないか、とも思えてくる(だいたいビリー・ボブ・ソーントンがただのダメ男役な訳ない)が、基本的に、泥沼化していく事態やキャラクター造形とか、ここら辺のアレコレにくすりとも笑える要素(非現実的とも言える)が無く、ひたすら小市民たちの姿を描くだけなので、たぶんここがコーエン兄弟の『ファーゴ』との差異になってる気がする。それ故、始めから終わりまでずっと地味で淡々としているが、その分、皮肉なラストが『切れ味の鈍くなったナイフで切りつけられたようなエグい痛み』になってると思う。)
△2001年宇宙の旅(U)
(想像以上に難解。しかし、さすがキューブリック、と言うべきなのか、冗長的とも取れる動きの少ない展開やセリフ劇の少なさ、セットとか映像とかは死ぬ程スタイリッシュでカッコいい。そりゃ父も「SF映画の映像表現を塗り替えた」と言うだろう、と。けど、個人的な意見ですが、ちょっと音楽やSEが不要だった気がしました。偉そうなこと言ってごめんなさい。小説未読なんだけど、『時空を凌駕した船長が無限の彼方でモノリスに触れることによって人類を超越した何かに進化した』という説に、なるほどねぇ、と思ったり。が、『時空を凌駕した船長が無限の彼方でモノリス作って宇宙中に放り出してた(あの赤ん坊は進化した何かじゃなくてモノリスの象徴)』みたいな無限ループ円環的解釈も面白いと思う。答えは知らんけど、たぶんそれでいいと思う。それがダメなら「じゃあもっと説明しろよ」と文句言っていい映画。2001年。もう20年以上経ったわけですが、2001年が未来だった時代に作られた映画なんだな、と思うとなんだか感慨深い。)
・クリスマス・イブ・イン・ミラーズ・ポイント(T)
(家族間の蟠りとかそういう水面下のアレコレが表出して、みたいな内容かと思ったら、そういうのがあるのは分かるんだけど聖夜の魔法で柔らかく包み込まれた感じの内容だったので、ちょい拍子抜けしてしまった。個人的には、家にいる大人たちと小さな子どものパートをもうちょい深掘りしてくれた方が良かったな……大人たちのアレコレと思春期キッズたちのアレコレ、そして警官のパート、とどれもあまりにも中途半端だったような気が。特に警官のパートが必要だったのだろうか。出すなら思春期キッズたちとの絡みがもっとあっても良かったんじゃないか。そして、ラストのあのおじさんは……。これが最後、と思えば、どこか寂しいクリスマスイブの雰囲気は存分に味わえる。しっかりクリスマス映画でした。)
△落下の王国(T)
(やっぱり大画面で観た方が断然良い。正直なところ、『ザ・セル』同様、やっぱりビジュアル先行で内容は後から、なのでそういう感じで色々雑なところはあるっちゃあるんだけど、ビジュアル面が当然のようにそれを凌駕してくるとこあるので。あと、青年と女の子の物語内における疑似親子関係も好きな人は好きと思う。ラストのバスター・キートンの本当のスタントシーンは本作の見どころ、と個人的には思ってます。バスター・キートンはたまたま死ななかったけど、影にはロイのように大怪我した人や亡くなってしまった人も大勢いたんだろうな・・・。女の子、まんまるお顔で前歯のない笑顔が可愛かったです。)
※番外編(ドラマ)
・エイリアン:アース(D)
(うーん・・・。これはたぶん『エイリアン』のIFストーリーということで良いのかな。ただ1の時点で既に『標本>(×∞)人命』だったので、ウェイランド・ユタニ社があの生命体の情報を持ってた可能性はあるよね、と思いつつ観賞開始。で、物語のかなり最初の段階で、登場人物が『グロテスクな子ども』と『グロテスクな大人』しかいないことに気付くので、ラストまで観たところで『これ最悪のバッドエンドじゃん』という結論しか出せないのだが、『エイリアン』シリーズ自体、個々の作品は「バッドエンドだったな」と思い直し。けど科学者夫妻もあんな風に迷うくらいなら宗教とか倫理あたりは最初に教育しとけよ、と思わなくもない。あのCEOの下でどれだけの効果があるのかは分からんが。危うさと登場人物全員への嫌悪感しかない中(嫌悪感についてはどうしたって『人間』側の人間なので許して欲しい。感情的に理解できるキャラは墜落する宇宙船の人たちくらいだったかな・・・)、唯一、最後の兄の表情と目玉に寄生されたアーサー(死体)になんとなく希望を抱きたくなってしまう。つか目玉はそれ自体に高い知性があって相手に合わせてコミュニケーション取る能力がありそうなのを見ると、逆にエイリアンとコミュニケーション取る必要あったのかな、と思ったりもする。コミュニケーション取る余地無く・・・、っていうのが『エイリアン』シリーズの醍醐味というか・・・まぁエイリアンとコミュニケーション取れないなら、このドラマ自体が成立しないんだけど・・・)
【総評】
今月はちょい地味なラインナップだった気がしますが、個人的に外せないと思っていた『クリスマス・イブ・イン・ミラーズ・ポイント』と『落下の王国』が観れたので良し。そして、『バンドワゴン』の配信開始に喝采。十数年振りで観ても、映画館で観た時のあの感覚を思い出せる。場所の記憶と結び付いてるんだな、と思うと、やっぱり映画館で映画観るのも良いものだな、と。で、配信で観てもやっぱり狭いライブハウスの観客エリアで立って演奏開始を待つ時や演奏を聴くあの感覚を思い出せるんですよ。元々、配信での映画観賞を否定しない立場なんですが、配信でもながら見でも、きちんと体験と結び付いてると思ってます。
【凡例】
☆:めちゃくちゃ好き。オススメしたい。
△:好き。人によってはオススメする。
✕:・・・
・:特に薦めないけど、悪くはないと思うよ?
(T):映画館
(N):Netflix
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(D):Disney+
(P):Primeビデオ
(-):その他動画配信サービス