異常気象だか何だか知らないが、季節の割には暖かく長閑な縁側で、久々にのんびりと寛ぐ鈴木の隣では小鬼姿の死々若丸が昼寝をしていた。
日差しは暖かい、とはいえ、時折吹く風はやはり冷たくひんやりしている。
鈴木は小鬼姿の時用として置いているハンカチサイズのブランケットを死々若丸の腹にかけ直してやりながら、晴れた空を見上げた。
雲ひとつない、晴れやかで気持ちの良い青空だ。
お正月、ということで修行はお休み。個人的な研究も一段落ついたところで、久しぶりの休暇を何もせず、死々若丸とのんびりと過ごしていた。
二日後には、また厳しい修行が待っている。今はだらけているのではなく英気を養っているのだ、と、鈴木は誰かに言い訳をするように考えながら、ごろり、と横になった。
隣で眠る死々若丸の方へ顔を動かす。
相変わらず、死々若丸は幸せそうに昼寝をしている。静かにしていれば、寝息さえも聞こえてきそうだった。
その無防備な姿は、ここが魔界ならば――本当に魔界ならば、彼もこんな風に熟睡したりはしないのだろうが――、命がいくつあっても足りないだろう。
それだけ隣にいる男、つまりは鈴木のことを信頼している、とも言えるその姿に、鈴木の頬は思わず弛んだ。
いつの間にか、当たり前のように隣にいて、当たり前のように寝食を共にした。明け透けに言ってしまえば、寝食以上のことも数え切れないくらいにしている。
正確に言えば、暗黒武術会より前に鈴木自身が彼を『スカウト』しているのだから、鈴木自らが彼を隣に立たせたわけだが、ふたりでいることがこんなに自然で当たり前のことになるとは、その時は思いもしなかった。
頭のどこかでは彼を切り捨てることを考えてもいたし、それはきっと死々若丸も考えていたことに違いないのだ。
死々若丸のことは信頼している。
彼も自分のことを信頼している、と、少なくとも鈴木はそう考えている。
でも、それとこれとは話は別だ。
どんなに信頼して、その警戒心を解いたとしても、彼はきっと、心の奥まで明け渡しはしないだろう。
今朝見せた笑顔だって、実は作り笑顔だったかもしれない。けれど、それでも構わない。
そもそも、自分も彼にすべてを明け渡すつもりなど更々ないのだから、一方的にそれを相手に求めるのは、ただのエゴだ。
鈴木は真っ青な空を見上げる。
君が一番だ、とは絶対に言えない。言えないけれど、君の為になら、もしかしたら死ねるかもしれない。
そして、君が俺の為に死ねなくても構わない。
隣で眠る君にも誰にも明かすつもりのない、永遠の秘密。
晴れ渡る空の下で、鈴木は大きなアクビをした。