07.夕さりつ方のキスが滲みる

窓の外の朱に気が付いて、山崎は目を覚ました。
朝方布団に入り、そこで意識はすぐに途絶えたようだ。気が付けば夕刻が迫ろうという時間になっているらしい。
だるい体と頭のまま、ぼんやりと部屋の様子を伺う。
何だか、妙な気配がする。
真撰組監察らしい勘の鋭さと注意深さで、警戒しながら、ゆっくりと半身を起こした。
枕の下に手を伸ばそうとしたところで、素早く動いた影に腕を掴まれた。
「っ、高杉さん?」
その姿を見て、山崎は驚いて身を強張らせる。
「随分とまぁ間抜けな監察だなァ。
 それに枕の下っつうのは、分かり易すぎるゼ。」
高杉は笑いながら、山崎の横に並んだ。
「い、いつからここに居たんですか?」
その問いに、高杉は更に笑い声を上げる。
「始めっからさ。」
クツクツと笑いながら、高杉は素早く山崎の腰を抱き寄せた。
「は、始めからって・・・
 起こしてくれれば良いじゃないですか、こんな驚かすような真似しなくても・・・。
 あ、お茶淹れますか?」
立ち上がろうとする山崎を制するように、高杉は腕の力を強めた。
「いらねェ。
 もう行く時間だ。」
「なっ・・・」
それならば、もっと早く起こしてくれれば良かったのに。
そう思う山崎を見透かすように、高杉は目を細めた。
「お前の寝顔があんまりにも間抜けで幸せそうだったからな。
 起こし損ねた。」
そう言って山崎の髪を撫でる。
山崎は何も言わず、高杉に体重を預けた。
数ヵ月ぶりの高杉の肌の匂いに、ドキリと心臓が高鳴る。
本当に少しの時間も無いのだろうか。
少し位なら大丈夫なんじゃないか。
そんな山崎の思いを見透かすように、高杉は山崎の顔に手を添えた。
「久し振りだなァ、退。」
高杉は愉しそうな目をして、指先でその感触を確かめるように微かに撫でてから、触れるだけのキスをする。
「じゃア、またな。」
短くそう言って、迫り始めた夕闇の中に去っていく高杉の後ろ姿を見送りながら、「あーぁ。」と溜め息を吐いて、山崎は再び目を閉じた。