不思議なもので、自分と同じ少し特殊な嗜好を持った人間というのは、互いに眼を見ただけで何となく分かる。
向こうもそう感じたらしい。桜吹雪の中で目が合ったその瞬間、彼は少し意味ありげな表情をして、すぐに顔を逸らした。
教職に就いて、そろそろ10年が経つ。
その間に、自分と同じ性的嗜好を持つ生徒には何人か遭遇してきたが、土方のように、放課後に国語準備室にまでその特殊な恋愛の相談に来る生徒は初めてだった。
今日も彼は付き合い始めてまだ2週間の、クズ男について相談、というより愚痴りに来ている。
いつも思うが、彼は見た目がイケメンのせいなのか、単純に男を見る目が無いのか、端から聞いていて「顔が好みだからって、よくもまぁ、そんなクズと付き合おうとするね」と言いたくなるような男に引っ掛かっていた。
・・・いや、引っ掛けた、の間違いかもしれない。
そのきれいな横顔を眺めながら、甘いカフェオレを口に含む。
今回も同じパターンだ。
懲りずにナンパで知り合ったクズ男への愚痴をこぼしている。
そして多分、3日後にはケロリとした顔で「別れた」とあっさり切るのだろう。
こちらの胸の内など気にせぬ素振りで、グチグチと何か言っている。彼の話をそれなりに真面目に聞いて、相談に乗っていたのは初めの3回程度。彼の恋愛パターンが分かるにつれ、適当に聞き流すようになった。今では正直、彼が話すことの五分の一も頭には入ってこないのだが、彼とて特に聞いてもらうつもりはなさそうだから、こちらの態度などどうでも良いのだろう。
ガス抜きかストレス発散か、その程度の事なのだ、きっと。
いつもこんな調子だ。
オレだって暇では無い。いいかげんにして欲しい。
いや、そろそろいいかげんにしようか、こんな関係。
土方の口が止まったタイミングで、彼の腕を引き、抱き寄せた。胸の中で、「担任として、彼の不純同性交際に心配なのだ。」と何かに言い訳をするのは忘れない。
彼の形のよい耳が赤くなるのを確認して、
「いいかげん、オレを選べよ。」
その耳許に、とびきり甘く囁いた。