微かに夜風が吹いているのが、その気配で分かった。
窓も雨戸もすべて閉めたはず。
咄嗟に、まだ覚醒していない身体のまま周囲の気配を窺うが、そこにはただ暗闇が拡がっているだけだった。
まだ夢を見ているのだ。
ぼんやりした頭でも、それだけははっきりと認識した。
それでも。
この暗闇の何処かに何かの気配を感じて、神経だけは暗闇の中に張り巡らせるように緊張させる。
何か。
何かが闇の中で息を潜めている気がする。
経験か、本能か。
理性以外の何かが、サイレンを鳴らし続けている。
暫く息を潜めて、暗闇の中、その何かを捉えようとするが、捉えようとすればする程、その何かはするりと霧散してしまう。
やっぱりただの思い過ごしか。
緊張を解いたその瞬間。
ごとり。
山崎は目を開ける。
夜の隅で、何かが落ちる音がした。