青春の再来:原作銀土
巡回中の恋人の後ろ姿を確認して、スクーターに乗ったまま背後に近付く。気配に勘付かれないよう、横を通り過ぎようとするタイミングで、器用に恋人を肩に担ぎ上げた。
「はァァァ!」
「総一郎くん、オタクの上司ちょっと借りっから。」
去り際、土方と巡回をしていたらしい沖田にそう告げると、沖田は退屈そうな目をしたまま、「そのまんま帰ってこなくても構いませんぜィ、旦那。」とだけ言って大きな欠伸をした。
「ちょっ、待てぇっっっっ。
俺ぁ、仕事がっ。
総悟ォォォ、助けろよォォォォォ!」
沖田は爽やかな笑顔で手を振り、2人に背を向けた。
「つか、危ねぇから暴れんなって。
オタクのゴリラの許可は取ったっつの!」
肩に担ぎ上げられたまま長い手足をバタつかせて、なおも暴れようとする土方を宥めるように、銀時は器用にその背中を撫でる。
「おめぇ、夏休み1日も取ってねぇじゃん?
ゴリラが、夏も終わっちまったけど、少しくらい羽伸ばせってさ。
つか、これ以上暴れたら、流石の銀さんも事故っちゃうから。2人仲良く並んで入院なんてヤダかんね、銀さん。」
「・・・じゃあ、とりあえず降ろせ。」
「降りた途端、逃げんなよ。」
「逃げねぇよ。
近藤さんの許可取ってあんだろ?」
これ見よがしに、はぁ、と大きな溜め息を吐いて、土方は大人しく銀時の体に掴まる。
久しぶりに感じた銀時の体温に何だか安心しつつ、結果的にやり残してしまうことになった書類の事を考える。
後で山崎に連絡しなくちゃなぁ、と思ったところで、スクーターは減速し始めた。
逃げたら逃げたで、メンドクセェんだろうな。
つーか、逃げ切れる自信もないし。
土方はそう思って、大人しくスクーターが止まるのを待った。
銀時は適当なコンビニにスクーターを止め、肩から土方を降ろす。
土方は「ふぅ」と一息吐いて、タバコを取り出した。
久しぶりに恋人に会えて、少しも浮わついていないと言えば嘘になる。
が、土方はそんな風を尾首にも出さず、ダルそうな演技を続けて、銀時を軽く睨み付ける。
「・・・で、どういうつもりだ?」
「なんで、尋問口調なの?
まぁとりあえず遅い夏休みってことで、後ろ乗れって。」
そう言って、銀時はシートの中から取り出したヘルメットを土方に差し出す。
土方の睨みなど、意にも介さない。
これ以上、此処でやり合っても埒が明かないだろう。
意外と頑固でマイペースな銀時に合わせる事にした土方は、まだ火を点けていなかったタバコを箱に戻すと、無言のままそれを受け取り、頭に被った。
「このヘルメットどうした?」
「買ったんだよ、土方くんの為に。
被り心地の良いやつで、結構高かったんだぜ。
大事に使ってくれよ。」
「そりゃ、おめぇ次第だな。
で、どこ行くんだよ?」
「んー、ヒミツ。」
楽しそうにそう言って、スクーターのエンジンを掛ける。
休みなら休み、と朝の内に言ってくれれば、それなりに準備もしたのに。大体、隊服では何処へいっても目立ってしまう。驚かせようとしたのだろうが、もう少し気を使ってくれてもいいのに。少しだけ上司を恨めしく思いながら、スクーターを跨ぐ。
内心、溜め息を吐いた土方の心を見透かすように、銀時は
「とりあえず、万事屋で着替えだな。
そのカッコじゃ目立ち過ぎ。」
と言って、スクーターを走らせる。
どうやら恋人は、此方の心の内などお見通しらしい。
高鳴る心臓の音から耳を塞ぐように、土方はその広い背中に甘えるようにしがみついた。