馬鹿って自覚しながらする恋なんて、ある?

メンドクサイ人に捕まったなぁ。
山崎はそう心の中でひとりごちた。
別に同性愛についてどーのこーの言うつもりはない。
どこかのミュージシャンも歌っていた。
『愛なんて不気味』なものだと。
山崎自身も多かれ少なかれそう思うから、旦那が誰を好きになろうと、副長が誰を選ぼうと(副長に男色の趣味はないようだったが)問題ではないと思っている。
が、いい加減、銀時がウザいのも事実だった。
今日もこうして、監察業務の合間に銀時に捕まった山崎は、屯所における土方について根掘り葉掘り迫られている。
つーか、部外者(しかも元攘夷志士、とはいえ見た目の通り、旦那が白であることは身辺調査の結果、確実だった。自分の仕事に間違いはない。)に副長の行動とか大っぴらに話せるわけないでしょうが。コンプライアンス的にも危機管理的にも色々アウトでしょ。とは思うものの、面と向かってそう言ったところで、相手は聞く耳を持たない雰囲気なので、適当にやり過ごすしか山崎には道が無かった。
山崎が銀時の嗜好を知ったのはその身辺調査の結果だが、銀時は銀時でバレたことを気にすることなく、むしろ逆に利用しようと、たまにこうして山崎を捕まえ、普段の土方、主に土方にちょっかいを出そうとする輩がいないかどうか聞き出そうとする。が、そもそも銀時の嗜好は特殊なわけでその基準でどーのこーの言われても2人の話は噛み合わない。
というか、そんなに気になるのなら喧嘩なんかしてないで、素直に飲みにでも誘えばよいわけで。
それが恥ずかしくて出来ないらしい三十路間近の男の拗らせた色恋沙汰は色んな意味で迷惑な事この上無かった。
「副長のこと可愛いなんていう人は、旦那以外にいませんて。」
「じゃ、ゴリラは?」
「安心してください。
 局長ならお妙さん以外眼中にないですよ。昨日も市中見廻りにかこつけて、お妙さんのことストーキングしてましたから。」
「それはそれで土方くんに迷惑掛けてんじゃないの。
 じゃ、総一郎くんは?」
「安心してください。
 沖田隊長なら旦那んとこのチャイナさんに夢中ですよ。こないだも公園で喧嘩するフリして、仲良くチューパット半分こしてましたから。」
「それはそれでちょっと心配だけど。
 じゃ、あのハゲは?」
「安心してください。
 原田隊長ならこないだの非番に可愛い子とデートしてましたから。あの風貌で、意外とモテモテなんですよ。彼女が途切れたことないらしいです。」
「それはそれでなんか腹立つな。
 じゃ、ジミー、お前はどーなの?」
「安心してください。
 副長のことは尊敬してますし敬愛の念もありますが、生憎、副長で欲情するような趣味は持ち合わせていません。」
「じゃ、あいつらは?
 こないだ真撰組に入ったとかいう若い奴ら。
 土方くん目当てだったりするんじゃないの?」
迫る銀時の姿に山崎は大きく溜め息を吐く。
「真撰組をなんだと思ってんですか。
 旦那と一緒にしないでください、この発情期ホモが。」
山崎はそう言って、人懐こい笑顔を返した。