愛を信じたい大人の話

ふとペンを動かす手を止めて、銀八は顔を上げる。
その視線の先には綺麗な横顔の教え子がいた。
本を読んでいるせいか、伏し目がちな眼に長い睫毛の影が落ちているように見える。
その横顔に声を掛ける。
「土方くんは信じてないの?」
「何を?」
「愛。」
土方は顔を上げない。
しばらくして、土方は本に視線を落としたまま、ゆっくりと口を開いた。
「先生は信じてんの?
 愛。」
銀八は少し笑いながら「あぁ、信じてるよ。」とだけ、言った。