錆びて重い屋上の扉を開ければ、一瞬だけ広い世界が見えた気がした。
適当な日溜まりに向かいながら、イチゴ牛乳のパックにストローを差す。
ふと見上げた視界の隅にフェンスが見えた。
なんだ、やっぱ空もフェンスで区切られてんのか。
そんなくだらない事を思いながら、そのままフェンスに凭れるように座り込む。
自身の銀色に光る髪をぐしゃりとして、退屈そうに息を吐いた。
耳に差したイヤホンから流れる曲も、ヒット曲だか何だか知らないが、退屈で仕方なかった。
なんだか無性にムシャクシャしてきて、乱暴な手付きでイヤホンを外し、胸ポケットに捩じ込む。
高杉のバカ騒ぎに付き合うのも、坂本の合コンに付き合うのも、桂の討論に付き合う気になれなくて、銀時はそれらから逃げるように1人で屋上に来た。
「だりぃ。」
独り小さく呟いてから、少しだけ頭を振って、立ち上がる。
何処にいても退屈で仕方なかった。
こんなところでぼんやりしてるくらいなら、いっそのこと、暴れてしまった方がマシなのかもしれない。
そう思って、掴んだフェンスを力任せに壊そうとしてみる。
だがそれは、ただガシャガシャと虚しく揺れただけだった。
イチゴ牛乳を一気に飲み干し、フェンス越しに校庭を、世界を見下ろす。
なんて狭い世界なんだ。
そう思いながら、持っていたイチゴ牛乳のパックを空に向かって放り投げようとしたところで、屋上の扉が開く気配に気付いた。
銀時は自然と、扉から見えない影に滑り込み、息を潜める。
屋上に入ってきた人物は銀時の気配には気付かなかったようで、適当な日溜まりにごろりと横になった。
銀時の知らない人物だった。
上履きのカラーからして下級生だろう。
なんて生意気な奴だ。下級生のくせにこんなとこでサボりなんて。
そう思った銀時は、その顔を確認するように目を細める。
綺麗な横顔だった。
しばらくその様子を観察して、銀時は視線の先のその人物に気付かれないよう、一歩を踏み出した。