02.チェリーシロップ・キッス

不意に、土方の視界を銀色が遮った。
「何聴いてんの?」
屋上に見つけたちょうど良い日溜まりに寝転んでいた土方は身体を起こす。
この銀色には見覚えがあった。
人気者の上級生だ。
とはいえ、その髪の色にたまげた位で、特に接点もなく、土方は遠目にしか見たことがなかった。
「・・・あの、何すか?」
一応イヤホンを片方外して問い掛ける。
言葉遣いはともかく、それが土方なりの上級生への最低限の礼儀のつもりだった。
「何聴いてんの?って。」
そう言って銀時は土方の耳から取り外されたそのイヤホンを取り上げ、自身の耳に装着した。
「随分、暗いの聴いてんね。
 鬱になりそ。」
しばらくして銀時はイヤホンを取り外し、笑いながら土方の手のひらにそれを返した。
「・・・悪かったな。」
今流しているプレイリストが、あまり同世代が聴くバンドでないことを自覚している土方は、ムキにはならずに自分の耳に付けたままのイヤホンも外し、曲を止めた。
「で、なんか話でもあんすか?」
特に顔見知りでもない下級生にこうして話し掛けるくらいなのだから、何か話でもあるんじゃないか、そう考えた土方は自分の前でしゃがんでいる先輩と向き合うように座り直す。
初秋の空は穏やかに凪いでいて、ふわふわの銀色とのコントラストがきれいだと、頭の片隅で土方は思った。
「うーん、話っつうか。」
銀時は頭をポリポリ掻きながら、思案するように空を見上げる。
「オレ、今日誕生日なんだよね。」
不意に、あたかも呼吸するかのように、自然に、唇が触れ合った。
『キスをしている』と認識した土方が銀時を突き飛ばすより前に、ひらりと銀時は土方から離れ、立ち上がる。
「今度は一発ヤらしてね。おーぐし君。」
そう言いながら、ひらひらと手を振り、銀色は軽やかに屋上を去っていった。
「はぁぁぁぁっ?!
 一発って・・・、
 つか、おーぐしってなんだよっ!!!」
土方の叫びは高く青い秋の空に飲み込まれた。