「お久しぶり」
不意に話し掛けられた気配を感じて、土方は視聴用のヘッドホンを耳から外す。
振り返ったその目に最初に映ったのは、銀色だった。
土方の後ろにあるボードをちらりと確認して、銀時は笑う。
「相変わらず、鬱になりそうなの聴いてんね。」
「・・・ほっとけ。」
土方はそう悪態を吐くと、手に持ったままだったヘッドホンをラックに掛け、銀時と向き合う。
「・・・何すか。」
「いやぁ、久しぶりだね。
1年ぶりか。
受験生がこんな時間にこんなとこいて、いーの?」
「息抜きですけど。」
適当に嘘を吐いて、かつての先輩だった人の目を見る。
銀時の在学中、特に仲が良かった間柄でもない。
接点など、ちょうど1年前のあの日あの屋上での短い会話以外、なかった。
銀時との距離を取りかねて、土方は少し戸惑いながら続けて問う。
「つか、何か用ですか?」
「用、っていうか・・・」
銀時が何か言おうとしたところで、銀時の背後から彼を呼ぶ声が聞こえた。
「おい、銀。どうした?」
土方が確認すると、4~5人の男女の集団が立っている。
その中に、土方も知っている顔がいくつかある気がした。
「あぁ、やっぱ俺パス。」
「そうか。じゃあ、な。」
一部の女子は何やら文句を言っていたようだが、そのまま集団は去っていった。
「良いんすか?」
「別に。大した用事じゃねぇし。
土方くんと今日ここで再会できた事の方が大事。」
「・・・俺の名前知ってたんだ。」
「そりゃあ、一発ヤろって約束した相手の名前くらいチェックするっつの。」
そう言って、銀時はへらりと笑った。
「とりあえず飯でも行こ。」と、土方の答えを聞くことなく、銀時は土方の腕を掴み歩き出す。
振りほどこうにも、その手の熱さと銀色に心と目を奪われて何も出来ないまま、土方は銀時に引き摺られように、歩く。
不思議なくらいに街の喧騒は耳に届かなかったが、それは少し前を歩く銀時も同じなのだろう、と土方は確信していた。2人無言だった。
「不思議だな。」
ふとぽつりと呟いた声に、銀時が振り返る。
「その髪。
秋の青空にも、雑踏のネオンにも映えるんだな。」
無表情のままそう言う土方に、銀時は一瞬目を丸くして、すぐに、笑うように細めた。
立ち止まり、ぐいっと、土方の耳元に口を寄せる。
「何その熱烈な殺し文句。すっげぇ、クるんですけど。」
スクランブル交差点の真ん中で、銀時は噛み付くように土方の唇を塞いだ。