05.ティーカップの底は真夜中

「あぁ。」
呆けたように溜め息を吐いて、土方の上に覆い被さっていた男はその動きを止めた。
土方は怠そうな態度を隠そうともせず、視線だけを銀時に向ける。
鋭く、でもどこか少しだけ熱に浮かされた目線を受けた坂田は、にまり、と笑いながら、「お誕生日おめでと。」と呟いた。
どこか無機質な響きだった。
本当に祝うつもりがあるのだろうかと思う位、感情の込もっていない響きだったが、土方自身、誕生日を祝って欲しいと思うようなタイプの人間でもなかったから、坂田から「おめでとう」と言われたところで、特に何の感慨も湧かなかった。
ふと視界の隅に入ったカップの底には、数時間前に飲み残したコーヒーがこびり付いてるんだろうな、とか、どうでも良いことを思っただけだった。
「・・・それは、昨日、」
坂田は土方の億劫そうな声を遮った。
「残念、まだ今日。」
愉しそうな声音。薄暗い部屋の中で土方を見下ろすその目は、爛々と光っている。
何が愉しいのか。
土方は小さく舌打ちをしてから、「黙れ。」と言う代わりに、下腹部に力を入れた。薄く笑った唇のその隙間から、ちろりと舌を覗かせる。
ぴくり、と坂田の肩が揺れ、その瞳が赤く鋭く光る。
ちょうどそのタイミングで、枕元のデジタル時計の喧しい光が、新しい一日の始まりを告げた。