ちゃらんぽらんな男 - 2/6

02.いつもへらへら笑ってる男

そういえば、あの男の真面目な表情を見たことがあっただろうか、と考えて、土方は洗い物をしている手を止めた。
いや、もちろんある。
普段はぐーたらしてる男だが、いざとなればやる男だ。
でも、2人でいる時はへらへらしているというか、やる気のなさみたいなものがいつもより前面に出ている気がする。
その割にはヤる事はヤっているのだから、やっぱりいざとなればやる男なのかもしれないが。
銀時が本気を出した時の殺気はマジでちょっと怖いので、そうしょっちゅう見たいものでは無いが、それでも2人の時のあの緩さはどうかと思うこともある。
敢えて言えば、セックスの時ぐらいなものだ。
銀時がマジな表情をしているのは。
2人がいわゆる恋人同士なのか、いまいち自信がない土方だが、それでもやっぱりセックスの時しか真面目な表情を見たことが無い、というのはどうだろう、と土方は思う。
とはいえ、銀時と向かい合った時の自分の表情など見たことが無いから、自分も人の事は言えない表情をしていて、お互い様なのかもしれないが。
そういえば、以前沖田に「旦那と一緒にいるときのアンタなんか見てらんねぇでさァ。」と言われた事を思い出して、土方は俯く。
銀時と会う時は当然非番の日だから、どうしても気が緩むのは仕方ないとは思うものの、銀時に甘えていることに、多少なりとも自覚はあったから、何だか無性に恥ずかしくなってきた。
だから、銀時が背後に近付いてきたことに、土方は気が付かなかった。
顔を赤くしながら、ぼんやり物思いに耽っている土方に、銀時は後ろから抱き付く。
「水道代、もったいないんですけどー。
 顔真っ赤にしちゃって、何考えてんのー。やーらしいなぁ。」
いつも通り、やる気のない声だった。
「うっせぇよ。
 じゃあ、てめぇがやれ。」
「えー。
 やるってゆったの自分じゃん。」
そうだった。
メガネとチャイナと姉さんの3人で旅行行ってるとかで、カオスな事になっていた万事屋の台所に呆れた土方が自分から言い出したのだ。
土方は溜め息を吐く。
「・・・あっちで大人しく待ってろ。」
そんな土方の言動を無視するように、銀時はその後頭部や首筋に顔を埋めてキスしながら、「久しぶりの土方くんの匂いだー」などと呟いている。
その顔はいつもよりへらへらしているのだろう。
確認は出来ないがそう確信して、土方は自身の緩んでいく頬を感じながら、洗い物を再開した。