04.もうその手は離せないんです
「セックスって何だと思う?」
土方の急な問い掛けに、沖田は胡乱げに振り返る。
問い掛けを発した土方は、妙に澄ました表情で立っていた。
それなりに返り血を浴びているはずなのに、その色白の顔は屯所を出た時と変化が見られないのが、腹立たしさに拍車を掛けた。
「・・・こんなタイミングで・・・
随分とまぁ・・・、余裕ぶっこいてますね、土方コノヤロー。」
沖田はそう言って、どこに潜んでいたのか、背後に迫った浪士を振り返り様、斬り落とした。
「土方のヤローと旦那がどんな爛れた関係だろうと、どーでも良いですがね。」
沖田は団子屋で団子を頬張る銀時を見つけて、その横に座り、口を開いた。
「巻き込まれんのはゴメンですぜィ。
土方のお守り役なんかやってらんねぇんで。」
銀時はやる気なさそうに沖田の方に振り向く。
その眼は、全身から醸し出すやる気のなさに反比例するようかのように鋭かった。
沖田はそれを認め、心の中で溜め息を吐く。
どうやらこの男は、その見た目に反して執着心が強い方らしかった。
まぁ、普段の言動からそれが垣間見えない事もなかったが、土方限定で特に強い可能性も高そうだ。
それは勘弁してくだせェよ、と沖田は心の中で呟く。
2人が明確にお付き合いしてるようには見えなかったが、銀時の執着心を改めて認識すると、さっさとセフレみたいな関係から脱却すりゃいいのに。
と沖田は思う。
まぁ、恋愛沙汰だけネジが外れたように思考が止まる土方と意外とうぶで頑固そうな銀時に、そんな駆け引きが出来るとも思えなかったが。
「沖田くんにお守りされるなんて御免だって言いそう、土方くんなら。」
銀時は団子を手に取り、もちゃもちゃと咀嚼してから、お茶で流し込んだ。
「土方のヤローの希望とか聞いてられねェんでね。」
討ち入りの最中にあんなどうでも良い事を考えてた上司の世話など、自分から願い下げではあるが、実際土方に何か不測な事態が発生したら。
多分、そのフォローは自分に回ってくる。
理由が理由だけに本気で願い下げだ。
とりあえず、あの男の頭から恋愛沙汰の悩みを取っ払いたかったのが、沖田の偽らざる本音であった。
その恋愛の行く末がどうであっても構わない。
手始めに、銀時にハッパを掛けてみようと試みたのだが、相手は沖田の想像以上に恋愛下手だった。
こんなとこまで似た者同士かい、笑えねぇや。と沖田は心の中で呟く。
「土方はあんなツラしといて、色恋沙汰にゃあ、めっぽう弱いんでさァ。
そろそろ蹴りつけねぇと、アイツ斬られますぜィ。」
誰に、とは言わず、沖田はニヤリと笑う。
「ま、旦那がどう思ってんのかは、知りゃしませんがね。」
そう言って、沖田は残っていた最後の団子の串を手に取り、爽やかに笑いながらその場を去った。