03.眼差しに盲ませ

「眼が格好良い」のだと、友人が言っていた。
その時はただぼんやりと「ふぅん」と思っただけだった。
友人が熱っぽく語る、ルカワくんの魅力なんかより一雨来そうな空の様子の方が気になっていた。
バスケ部の練習を冷やかしながら、ふと先週のファミレスでの会話を思い出して、松井はコートを走る男子たちの姿を、少しだけ真剣な目で見つめてみた。
確かに、バスケットコートを縦横無尽に駆け回る彼の目元はいつも涼しげでクールだし、あの長い睫毛が色っぽいと見えないこともない。あんな涼しそうな目付きしながら、でもギラギラとボールを追い掛ける。そんなギャップがまたカッコいいんだろうな、と松井は結論付けて、でも、と思う。
中身はさておき、外見だけなら三井さんの方がカッコいいと思っていた。
三井さんは確かにあんな感じだし、馬鹿だけど。
鮮やかというか、艶やかというか。
三井さんも、ルカワくんと同じようにギラギラとボールを追い掛けているのだが、なんだか、ルカワくんよりしなやかな感じがあると思うのだ。
それが2歳年上のその差によるものなのか、個体差なのか、松井には分からなかったが、三井さんの方がカッコいいと確信を持って、そう思っている。友人たちにも、たまに喋る斜め後ろの同級生にも、まだ誰にもそれを告げたことはない。
そんな事をうっかり友人たちにでも伝えようものなら、勘違いされるのは明白だったし、それは松井にとって本意ではない。
松井自身、その感情が恋心とは異なることも分かっていたし、かの先輩が、斜め後ろの同級生と恋人同士であることも知っていたからだ。
邪魔をする気などない。むしろ、応援しているつもりだった。
そんな事を連々と考えながら、放課後の体育館を一歩引いた気分で眺める。
キャッキャッとはしゃぐ友人たちや、クールな風を装いながらも真剣に様子を見守る強面の同級生と、その周りで賑やかに騒ぐ3人組。コートを軽やかに走り回る部員たち。
いつもの、退屈な放課後だった。
ふあぁぁと、大きな欠伸をして伸びをする。
ふと、コートの真ん中にいるかの先輩と目が合った。
嫌な予感がして、松井は少しだけ後退る。
願わくば、何事もなく。
このままフェードアウトしようか。
そう決めた瞬間だった。
「よし決めた。
 次のシュートは、お前に捧げる。」
そう大声で宣言し、自分を指差す三井の姿に松井は冷や汗をかく。
三井先輩に他意はない、はずだ。
だってそうだろう。
自分の斜め後ろには、三井先輩の恋人がいるのだ。
多分、あの先輩は自分の発言の影響力をこれっぽっちもわかっちゃいないのだ。
斜め後ろにいるはずの水戸からの視線が痛い。
彼のその冷たいオーラを全身で受け止めるには、松井はまだ慣れていなかったし、そもそも、それを受け流せるような経験も積んでいない。というか、積みたくもなかった。
空気を読まぬ先輩の屈託なく笑う姿に、松井は胸の中で毒吐きながら、薄ら笑いを浮かべるのがやっとだった。