Title by 天文学
02.沈黙と人間の夜で成っている
蝉時雨が止んだのに気が付いて、山崎は目を開けた。ひっそりとした薄暗闇の中で、隣で寝ている男の白い腕が目に入る。珍しい、まだ寝てるなんて。そう思いながら、男の寝顔を覗くように寝返りを打つ。その微かな気配にも、男は目を覚まさなかった。穏やかで規…
06.子午線を越えて夜を掴まえて
微かに夜風が吹いているのが、その気配で分かった。窓も雨戸もすべて閉めたはず。咄嗟に、まだ覚醒していない身体のまま周囲の気配を窺うが、そこにはただ暗闇が拡がっているだけだった。まだ夢を見ているのだ。ぼんやりした頭でも、それだけははっきりと認識…
12.ぼくらは墓地からやって来た
しとしとしとしと………雨が降っている。副長の部屋の障子を開いた山崎が静かに頭を下げると、その気配に土方は「なんだ?」と問うように、少しだけ頭を傾げた。ゆるぅく紫煙が立ち上るのが見えて、山崎は小さく溜め息を吐く。「この部屋、ヤニ臭いですよ。 …
13.白銀の瓦礫の上に立っている
さぁさぁさぁさぁ…雨が鳴る。山崎は土方の居室の前の縁側で、ふと立ち止まり、空を見上げた。強くはないが確実に地面を濡らしていく雨に、小さな溜め息を吐く。「なんだ。」障子の向こうから土方の短い問い掛けが投げられ、山崎は少しだけ慌てながら、「失礼…