パラレル 01.八土シリーズ

八土シリーズSS集

  • 銀八が土方を好きなだけの話

    雨がまた降り始めたようだ。サアサアサアと窓ガラスが鳴るのを感じて、銀八は何となく顔を上げる。その視界の隅に、ソファで寛ぐ土方の姿を確認した。「授業いーの?」土方は少しだけ顔を上げて、銀八の向こうの雨降りを確認するように目を細める。「ノートな…

  • 遠くの祭り囃子の話

    開け放った窓から、風に乗って祭り囃子が聞こえてきた。参考書を捲る手を止めて、土方は窓の方に顔を向ける。銀八も、釣られたように外の方に意識を向けた。「近くの神社でさ、縁日あんだよ、今日。」団扇をパタパタと扇ぎながら、銀八は気怠そうに口を開く。…

  • 深夜のドライブの話

    部屋で何するでもなく参考書をパラパラと捲る恋人の様子を横目で窺った。結局、夏休みに入ってから、土方は予備校をサボってはこのオンボロアパートにしょっちゅう来ていた。電気代は食う癖にろくに効かない、古びたクーラーと扇風機しかないこの部屋に。特に…

  • 氷が溶けるだけの話

    「土方くんてさ、なんで十四郎っつうの?」銀八の急な問いに、土方は気怠そうに顔を上げる。「親父と親父の14人目の愛人との間に出来た子供だから。」そう答え、また手元の文庫本に視線を落とす。「は。」「・・・冗談だよ。 愛人との間に出来た子供っての…

  • 愛を信じたい大人の話

    ふとペンを動かす手を止めて、銀八は顔を上げる。その視線の先には綺麗な横顔の教え子がいた。本を読んでいるせいか、伏し目がちな眼に長い睫毛の影が落ちているように見える。その横顔に声を掛ける。「土方くんは信じてないの?」「何を?」「愛。」土方は顔…

  • せつなさの質量について考える話

    ふと手を止めて、銀八は本棚を見上げた。本が1冊、抜けていることに気が付いた。ペンを置いて立ち上がり、その不自然に空いた空間を確認する。確かここに置いていたのは・・・かなり分厚かったこの本を、わりとよく読んでいた彼の横顔を思い出して、銀八は大…